第10回世界陸上は9日、五輪スタジアムで第4日の競技が行われ、男子400mハードル決勝で為末大(APF)が今季自己最高となる48秒10で3位に入り、2001年エドモントン大会以来、2大会ぶり2度目の銅メダルを獲得した。以下はレース後の為末のコメント。
■為末「思い出が乗っかっている」
選手村で、日本選手権もこういう(豪雨の)天候で1位だったので、もしかすると言っていたら、怖いぐらいに予想が当たりました。雨が突然降って、若い選手が動揺していたので、最初にかっ飛ばせば、集中力とやる気がそがれるだろう。(後ろからスタートする選手は)パニックになるだろうと思っていました。
最初は、雨でレースの中止情報が流れて、(情報に何度か左右されて)アップをやめて荷物をまとめるのを何回も繰り返す選手もいました。経験で、正確な情報が出るまではじっとしていた。案の定、(ベテランのフェリックス・)サンチェス(ドミニカ)と僕だけがじっとしていました。
今回はかけ事に勝ったような感じです。生死の果し合いのような。まさか(メダルまで)順番が回ってくるとは。何が影響していたのかは分かりません。本当に力を出し尽くして、(取材を受けるために)階段を上がるのもつらかった。3番とすぐには分かりませんでした。(電光掲示板を見て)まさかとは思いましたが、「Dai」という名前は一人しかいませんので。誰かと競り合っているのは分かったので、すべり込んでゴールしようと思っていました。
(3位争いをしたカーロン・)クレメント(アメリカ)はあと5年すれば、もっとうまいレースをしている。あと10回走ったら違う。(今でも)10回やったら10回負ける。100回やって1回勝てる。その1回が来ました。決勝ってそういうものなんでしょうね。
スタートのときは、「人生で何回かしか、こんなことはない」と楽しむ余裕がありました。雨にさらされてサムライっぽいなとも思いました。(銅メダルを取った)4年前に(今日の雨のような)この状況だったらメダルは取れていない。若い選手たちは大会で何回も一緒なので、(雨で)心が揺れているのが目に見えて分かりました。試合数だけはこなしていますので、うまくはまりました。
(前回の3位と比べて)思い出は乗っかっています。前みたいにうれしいだけではない。次の大阪は、日本陸上界にとって大事な大会。日本で陸上がメジャースポーツとなるかどうかの勝負をかける。ゼロからいかないと。競技人生をかけるのは北京(五輪)です。
エドモントンの銅から4年もかかったというのが正直な気持ち。でも、あれがなかったら自分が陸上をやっている意味も分からなかったですし、陸上をやっていないかもしれない。プロでやりたいという自分のモチベーションにもなりました。無駄に思える4年間ではなかったと思います。プロになってから結果が出たのは重みが違う。思いどおりにいったメダルは大きいです。
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